宝石の色とパワーにまつわるお話あれこれ(あいうえお順)

ジュエリーストーンの魅力って何でしょう。それは、輝き・透明さ・色合いなどがかもし出す特別な存在感にほかなりません。とりわけ石の色は、具象・抽象の区別なく、昔からいろいろなものに象徴されてきました。このページでは、おもにジュエリーストーンの色や、お守りとしてのパワーなどにまつわるトリビアをご紹介したいと思います。


アクアマリン アメシスト エメラルド オパール ガーネット
サファイア ジェット ターコイズ ダイアモンド トパーズ
トルマリン ペリドット ルビー

 アクアマリン(藍玉)Aquamarine(3月の誕生石)
 夕方から夜分にかけてとくに映えるストーン、それがアクアマリン。イブニングドレスにもっともふさわしいジュエリーのひとつとも言われています。その透明な水色が、キャンドルのような薄明かりの下でひときわエレガントに輝くからです。その澄みきったみずみずしさは、とくに春から夏にかけて、着けている人はもちろん、見る人の心をとても爽やかにしてくれますね。

アクアマリンの語源はラテン語の海の水、とくに地中海の美しい海の色。その色が目に優しいことから、アクアマリンを浸した水で目を洗うと、あらゆる目の病気を治すと言われてきました。あるいはしゃっくりを止めるとも。それには気分を落ち着かせる優しい色が関係していると思われます。

昔の船乗りは、水難の心強いお守りとして、いつもアクアマリンを携えて航海に出ました。その由来には二つあって、ひとつは水の精の宝物がアクアマリンになったという説、もうひとつは、とある船乗りに片想いした人魚の涙がアクアマリンとなって浜辺にうち寄せられ、それを拾った別の船乗りがお守りにしたという話(こちらのほうがロマンチックかな?)。自然の怖さを知っている船乗りが「ゲン」をかついだことは、容易にうなずけます。もしもタイタニックの乗客が同じようにしていれば・・・

アクアマリンは、勇気を奮い立たせ、倦怠感を払い、思考を活発にし、洞察力と予知力を与え、あるいは不眠症が治ると昔から信じられてきました。スゴい効能です!とくに既婚者には、愛情関係を円満にする力があるとされています。近代では、宝石セラピーで頭痛の治療に用いられたり、新しい友達を作るお守りになったりしています。そのいずれもが透明で清らかな水色からもたらされているのです。


 アメシスト(紫水晶)Amethyst(2月の誕生石)
 アメシストは淡い藤紫から赤みを帯びた紫色で、高貴さ、優雅さ、優しさを醸し出します。それだけに、この色が似合うためには思慮深く、優しく、美しい女性でなければなりません!

この石は、その色からワインストーンと呼ばれています。別名バッカスストーンとも言いますが、それはギリシャ神話に由来しています。アメシストという名の美しく信心深い乙女がいました。あるとき、たまたま機嫌を損ねていた酒の神バッカスが、ダイアナ神殿に向かっていたアメシストに虎をけしかけて憂さ晴らしをしました。これを見た狩の女神ダイアナ(アルテミス)は、あわれに思い彼女を純白の石に変えました。我に返って自らの行為を恥じたバッカスが、持っていたブドウ酒をその石に注いで罪を詫びると、純白の石は美しい紫色のアメシストになりました。

アメシストの語源はギリシャ語のアメタストス(酒に酔わない)。古代ギリシャ人は、アメシストを身に着けているとどんなにお酒を飲んでも酔っぱらわないと信じていました。転じて後世には、暴飲暴食の戒めや解毒のお守りとされてきました。また、枕の下に入れて眠ると不眠症が治るとか知性が磨かれるとか言われています。エジプトでは魔除け。また、酒の神バッカスに由来することから縁結びに効能があるとされ、ヨーロッパでは新婚カップルにプレゼントする宝石として使われています。

この石は水晶の仲間ですが、そのうちでもっとも高価なもの。バイオレットの色合いの深みで価値が決まり、ブルーやレッドの閃光のような模様が見られるものが最高級品とされています。


 エメラルド(翠玉)Emerald(5月の誕生石)
 持ち主に癒しをもたらすとされている宝石、それがエメラルド。それは、柔らかく澄んだグリーンが視覚的な安らぎを与えるため、と科学的に説明されています。人間の目は、太陽光に含まれる色のうち、緑色に対してもっとも感度良く作られています。このことは、緑色が人間にとってもっとも好ましい色である証なのです。ちなみに、植物が緑色なのは、葉緑素が緑色だけを吸収しないからです。

エメラルドは宝石の女王とも女王の宝石とも呼ばれています。もっとも希少なものは、ピュアグリーンまたはわずかに青がかったグリーン。ルーペで拡大すると、閉じこめられた結晶が形成する木の葉のような模様が見えます。鉱物学的には、エメラルドは緑柱石の仲間で、緑色を発色させているのはクロム成分です。緑柱石にはほかの色もあり、水色はアクアマリン、ピンクはモーガナイトとなります。

古代人は、エメラルドが眼力と精神力をとぎすますと信じ大切にしました。彫刻師は作業机の引き出しにエメラルドを入れておき、ときどき取り出して眺めては、暗い照明と細かい作業で疲れた目を休めたといいます。もっとも目が疲れにくい色だからでしょう。

古くからエメラルドは幸運と富の象徴でした。また、持ち主に未来を予見する力をもたらすという言い伝えから、中世には予言に用いられ、旅人にとっては道中の災難や危険から免れるためのお守りでした。古代のローマ人は、この石を愛と美の女神ヴィーナス(アフロディテ)に捧げたそうです。クレオパトラもエメラルドを愛しました。イスラム教の世界では、エメラルドで敷き詰められたパラダイスの緑の園という描写が、数え切れないほどの書物に出てきます。

この宝石にまつわる伝説は数多くあります。キリストが最後の晩餐で使った杯(聖杯)は、エメラルドで飾られていたそうです。それはのちに行方不明となり、アーサー王の騎士(円卓の騎士)たちが必死で探しましたが、結局見つけることは叶いませんでした。

スペイン人は、16 世紀にコロンビア(現在でも最良のエメラルド鉱山があります)やメキシコにあった最高級のエメラルドを根こそぎ略奪しましたが、多くがスペインへの帰途、海難により海の藻屑と消えてしまいました。これら失われたエメラルドの伝説は、キャスリン・ターナーとマイケル・ダグラスが共演した映画「ロマンシング・ストーン」のように今でも生き続けています。


 オパール(蛋白石)Opal(10 月の誕生石)
 オパールがなぜ虹色や玉虫色に煌めくのかは長らくの謎でした。それを解明したのは日本とオーストラリアの研究者です。オパールはほかの多くの宝石のような結晶構造ではありませんが、ケイ土粒子が結晶のように線状に規則正しく並んでいます。そしてその粒子の大きさにより色が変わるのです。小さいと紫、大きいと赤、中位だと緑や青というふうに。光が反射・屈折してきらめく色の変化は「色の戯れ」と呼ばれ、オパールの価値を決めるもっとも重要な要素となっています。

オパールの語源はサンスクリット語のウパラ(宝石)、またはラテン語のオパルス(色の変化)。古代にはエメラルドに次ぐ貴重な宝石で、虹色に輝くことから希望を象徴し、幸福をもたらすラッキーストーンとされてきました。古代のローマ人が名付けたのはキューピッドストーン(天使の石)。虹色が見えることから「人生が7回変わる」とも言われましたが、すくなくとも 17 世紀までは幸運をもたらす宝石として愛されてきたのです。

ところが 18〜19 世紀になると、一転して不吉な宝石とみなされるようになりました。おそらくゲルマン民族の迷信が原因となったのでしょう。騎士物語「アイバンホー」の作者サー・ウォルター・スコットの小説「ガイエルスタインのアン」でも、主人公の女性が怒ると彼女のオパールは炎のような赤色となり、死んだときには灰色になったと記されていたため、その風潮に輪をかけました。オパールは水分を含んでいて、乾燥するととても割れやすいので、宝石業者のあいだでオパールの売買を厭う気運が広まったくらいです。

その後、英国のビクトリア女王が財政を潤すためオパールに着目しました。当時英国の統治下にあったオーストラリアの鉱山でオパールが豊富に産出されたからです。そこで、女王自身がいろいろなオパールジュエリーを着けたり、王子たちの結婚祝いに贈ったりして悪評を追い払ったのです。もしそんなことがなかったら、オパールは魅力のない宝石となっていたかもしれませんね。

あの高橋尚子選手は、シドニーオリンピックのマラソンでで金メダリストとなる4日前にオパールの指輪を買っていたそうです。もちろん、金メダルは幸運だけで得られるものでは決してありません。


 ガーネット(柘榴石)Garnet(1月の誕生石)
 ガーネットと聞くと深みのある赤紫色が思い浮かぶのが普通ですが、実は様々なバリエーションがあります。アーマンダイン(もっとも普通のもので、濃い赤から茶色がかった赤)、パイロープ(血の赤)、フィンガー・ジェム(ルビー色)、ロシアで少量産出されるデマントイド(エメラルドグリーン)、アンドラライト(黄色・緑・茶色)、カラフルなグロシュラー(オレンジ・緑・茶色・点在する黄色)。かつてロシア皇帝の一番のお気に入りは、グリーンのダイアモンドガーネットでした。

中世には、色が似たガーネットとルビーはどちらも「ざくろ石」(カーバンクル)と呼ばれていました。語源はラテン語のグラウヌム(種をたくさん実らせるという意味)。スペイン語でザクロを意味するグラナダ、フランス語ではグレナード。ちなみにグレナードの英語読みグリネードは手榴弾のこと。爆発するとザクロの実のような小さい粒があたり一面にはじけ飛びます(怖いコワイ)。

ガーネットはキリスト誕生よりもずっと前から珍重されてきたとても古い宝石です。ノアが方舟で40昼夜も豪雨の中を漂流したとき、火のように輝くガーネットを舳先の明かりにしたと言い伝えられています。また、古代エジプトの宝石職人が好んで用いました。

この石は憂鬱症や動悸を癒し、悪意を追い払い、創造性を豊かにするとされてきました。また、持ち主を毒から守り、肺や血の病気を治し、怒りを抑え、不仲を解消するとも。旅人には健康のお守りでした。

ガーネットは恋人たちの想いを成就させるという言い伝えもあります。かの偉大なゲーテが 74 才 (!!) のときに恋した 19 才の娘ウルリケは、逢引のときにいつも深い赤色のガーネットを着けていたそうです。ただし、他の宝石を同時に持つと、その効き目は失せると言われています。彼女は 82 才になってもこの宝石を手放さなかったとか。


 サファイア(青玉)Sapphire(9月の誕生石)
 サファイアはブルーが一般的ですが、緑、オレンジ、黄、金色、赤紫、ピンク、ピンクがかったオレンジのものもあります。ロンドンのケンジントン博物館所蔵の「ミステリアスサファイア」は、昼間は青色に、夜になるとアメシストのような紫に見えるそうです。また、無色透明のものはダイヤモンドの代用として普及しました。最上のものはカシミアサファイアと呼ばれています。

旧約聖書の出エジプト記によると、神がモーゼに与えた十戒は、サファイアの板に書かれていたとされています。古代から、サファイアは純真と真実に代表される神聖性に関連づけられ、神のご加護を得えられると信じられていました。また、旅人の安全を守り、疫病を防ぎ、平和・繁栄・喜び・知恵などをもたらすお守りでした。魔術師は、かすかな御神託を聞き取るため、サファイアをもっとも好んだということです。なかでもカボションカット(上半分がドーム状のカット)のものは、光が当たると中心で交わる三本の光線が現れることからスターサファイアと呼ばれています。その三本の光の筋は、それぞれ信頼・希望・運命を象徴するとされています。

18 世紀のヨーロッパの王様は、愛人の貞淑度を試すためにサファイアを用いたとのことです。浮気をしている女性がサファイアを持つと、色が変わると信じられていたのです。

世界中でもっとも有名なサファイアのひとつは、スミソニアン博物館(ワシントン)が所蔵するローガンサファイア。423 カラットのクッションカット(丸と正方形を合わせたような形)、周囲をダイヤモンドが飾るブローチで、原産地はスリランカ。もうひとつはモスクワのダイヤモンド基金所蔵のロシアの王冠で、258 カラットのブルーサファイア。ちなみに、ダイアナ妃がチャールズ皇太子から贈られた婚約指輪は、ダイヤモンドではなくブルーサファイアでした。こちらのほうがロイヤルファミリーにふさわしいとされたのです。


 ジェット(黒玉)Jet
 ジェットはキラキラ光る漆黒の石。流木が化石化したもので、石炭に似ています。石器時代から装飾品として用いられてきた、もっとも古い宝石のひとつ。ヨーロッパ各地の遺跡からは、魔よけとして使われたジェットが数多く発掘されています。古代ローマ人は黒い琥珀と呼んで珍重しました。

ジェットは、7世紀から約 1000 年間にもわたり、キリスト教の宗教的装身具として用いられてきましたが、17 世紀に起こった宗教改革による偶像崇拝排除ですたれてしまいました。しかしその後、1861 年3月に母堂を、続けて不幸にも同年 12 月に夫君アルバート公を 42 才の若さで亡くしたヴィクトリア女王が、モーニングジュエリー(服喪期間につける装身具)と制定して以来、ヨーロッパで大流行しました。ビクトリア女王は 25 年間にもわたって喪に服したそうです。しかし、長い喪が明けてからは、ほかのカラフルな宝石に関心が移り、ジェットの人気は急落してしまいました。ちなみに現在のエリザベス女王は、ビクトリア女王から数えて4代目の英国王になります。

最近、パリコレを中心に、ジェットを使ったアンティークジュエリーがデザイナーの注目を集めるようになりました。かつてのモーニングジュエリーとしての意味合いはほとんどなくなり、ノーブルでキリッとした印象を強調してくれるチャーミングなジュエリーとして蘇ったのです。スワロフスキーからも、ジェットカラーのアンティーク調クリスタルジュエリーが多数発表されています。


 ターコイズ(トルコ石)Turquoise(12月の誕生石)
 優しくまろやかな色で気持ちを和らげてくれる淡いブルーグリーンのターコイズ。古くから愛・癒し・幸運・友情などをもたらすとされてきました。また、ヒーリングストーンとして「あがり癖」の治療にも用いられています。良質のものはペルシアンと呼ばれ、均一な明るい青色がコマドリの卵の青色と表現されています。

ターコイズは、買った人よりもむしろ贈られた人に幸運をもたらすと言い伝えられています。スペインのイザベラ女王がコロンブスの大航海にあたって授けたのはターコイズでした。コロンブスはそれを羅針盤に付け、新大陸を発見して 1493 年に生還しました。この宝石には自らが割れることで持ち主を守ってくれるという伝説もあります。科学的には多孔質で微量の液体を含んでおり、それが乾燥するとヒビが入りやすいため、と説明されています(夢のないお話)。さらに、色を変えることで持ち主に異変を知らせるとも。熱と湿り気に敏感なため、変色しやすいからでしょう。

ターコイズは、ジェットやガーネットとともに最古の宝石のひとつです。7500 年前のミイラの副葬物として発見されたことからも、それがうかがえます。また、コーカサス地方で発見されたことから、ギリシャでカリーナと呼ばれていました。ターコイズと呼ばれるのは、トルコ経由でヨーロッパに運ばれるようになった 13 世紀以降のことです。


 ダイアモンド(金剛石)Diamond(4月の誕生石)
 ダイアモンドは古代インドではじめて採掘されました。紀元前4世紀末のサンスクリット語写本に「戦士の神インドラの稲妻」という記述があります。歴史上、宝石として登場したのは 11 世紀になってから。ハンガリー女王の王冠に使われたという記録が残っています。現在、世界最大のダイヤモンドとされているのは、タイ国王ラーマ9世に献上された 546 カラットのザ・ゴールデン・ジュビリー

産出されるダイアモンドのほとんどは、多少黄色や褐色味を帯びています。そのため、無色透明のものが価値が高いとされていますが、稀少なブルーやピンク、グリーンなどは、無色より高値で売買されます。低級とされているイエローダイアモンドでも、カナリーイエローと呼ばれる綺麗な黄色のものは、無色のものより貴重とされています。ブラックダイアモンドはカーボナードとも呼ばれ、ダイヤモンドの微細な結晶が密接に集積したものです。

その価値ゆえにダイアモンドには数々の伝説がつきまといます。

まず筆頭は、映画「紳士は金髪がお好き」でマリリン・モンローが着けた「バローダの月」。24 カラットのイエローダイアモンドです。インドのマハラジャからマリアテレジアに贈られ、そして断頭台に送られたマリーアントワネットの胸元を飾りました。そのため、このダイアを持つと「名声を得るが幸せにはなれない」という噂がつきまとうようになりました。3年前は日本人の松木悌氏が所有していましたが、その後どうなったでしょうか?

お次は、呪いの伝説で知られる青色のダイアモンド「ホープダイアモンド」。時は16 世紀。家臣からこの宝石を献上されたペルシャ国王は謀反で殺される。その後所有者となったフランスのルイ 14 世が宝石を入手した頃からフランス経済は停滞。フランス革命の原因となる。相続したルイ 15 世は天然痘で死亡。ルイ 16 世と王妃マリー・アントワネットはフランス革命で処刑。19 世紀になって、イギリスの銀行家ヘンリー・ホープが購入(ホープダイアモンドの由来)。ヘンリーの死後、破産によりホープ家は没落。フランス人の宝石ブローカーが買い取るが発狂した挙句自殺。フランス女優ラドルが入手するが舞台上で愛人に射殺され、その愛人は革命家に殺される。オスマン帝国のスルタンに渡るも革命が起きて失脚。ギリシア人の宝石ブローカーの手に渡るが自動車事故で家族が全員死亡等々、まさに不運のオンパレード。しかしヘンリー家の話以外は史実としてほとんど確認されておらず、ツタンカーメンの呪い的な伝説のようです。現在はスミソニアン博物館に所蔵されています。

最後は「コ・イ・ヌール」(光の山)と呼ばれる無色透明のダイアモンドのお話。もともとはムガール帝国(インド)の財宝。18 世紀にインドを侵略したペルシャのナディル王が策略によって手に入れますが、徐々に正気を失い、結局暗殺されてしまいます。その後も、王家の親族によりこの宝石をめぐって骨肉の争いが続きましたが、19 世紀になりインドがイギリスの統治下に入ると、このダイアモンドもビクトリア女王の所有物となります。この「男に不幸をもたらす石」は、以降、女性王族だけが身につけられる宝石として、ビクトリア女王、アレクサンドラ王妃、メアリー女王そしてエリザベス女王の王冠を飾りました。今は、ロンドン塔でこの王冠を見ることができます。


 トパーズ(黄玉)Topaz(11月の誕生石)
 トパーズはコニャックのような琥珀色、あるいは桃の赤みの色をしています。そして、その中に暖かい茶色とオレンジが混ざり合い、えもいわれぬ深みのある色合いを呈します。まれに、シェリー酒の赤に似た淡いピンクのこともあります。トパーズの芳醇な色と輝きに、人々は闇や悪とは正反対の性質を見いだしてきました。

トパーズの名の由来は二つあります。ギリシャ語のトパゾス(探し求めるの意)とサンスクリット語のタパス(火)。探求するという言葉が幸福の追及に転意し、また、夜も輝くことから、暗闇の恐怖や邪悪を追い払うと信じられていました。古代エジプト人は、トパーズの金色は太陽神ラーの放つ光だと考えていました。古代ローマ人もまた、トパーズを太陽の神ジュピターになぞらえていました。

ギリシャの哲学者アリストテレスはトパーズを愛し、両手の指に余る指輪をしていたと言われています。人々は賢人がこの石を身に着けているのを見て、それが悪夢や魔力から守ってくれるだけでなく、知恵も与えてくれると信じたというのは古い冗談でしょうか。伝説によれば、これを身につけると、いざというとき他の人から見えなくなるそうです。毒の入った食べ物や飲み物に触れると色が変わるともされていました。ほかの言い伝では、指輪にしてはめると突然の死から免れ、枕の下に入れて眠ると元気が回復し、ネックレスにしてつけると頭が良くなるそうです。

世界最大のトパーズは、ポルトガル王の王冠に飾られた 1600 カラットの「ブラガンザ」と呼ばれる無色透明のもの。はじめはダイアモンドに間違われていたとのことです。


 トルマリン(電気石)Tourmaline(10 月の第二誕生石)
 トルマリンの語源は、スリランカの言葉で「混ざった」を意味するトゥルマリ。バリエーションに富んだ色に由来しています。そのことから、トルマリンは美的感覚をとぎすますとも言われています。

無色・黄色・茶色・赤・ピンク・緑・深緑・青・黒など、その多彩さゆえに別の石と混同されることがよくあります。ルビーと思われてきた 17 世紀のロシアの王冠に付いた宝石が、実はトルマリンだった、ということも。「ウォーターメロン(西瓜)トルマリン」と呼ばれる、内側が赤で外側が緑のものもあります。ブラジルで発見されたクジャクの羽のように緑色に輝く希少種のトルマリンは、とても高価です。

中国の西太后はピンクトルマリンを愛したと言われていますが、今はトルマリンで作った枕をして永遠の眠りについているそうです。

トルマリンは、その日本名「電気石」が示すように、つねに帯電していて電流やイオンが発生しているとのことです。近年は、この性質を利用して肩こりや疲労回復などに効く健康グッズに加工されています。


 ペリドット(橄欖石)Peridot(8月の誕生石)
 春の芽吹きを思わせる柔らかい薄緑色のペリドット。しかし、古代エジプト人はそれを太陽の石と呼んで崇拝しました。エジプトの砂漠で昼間に見るペリドットは、太陽のようにまぶしかったからです。オリバインとも呼ばれるペリドットの色は、オリーブグリーン、イエローグリーンあるいは茶色がかったグリーン。もっとも高価なのはライムグリーン。いずれもエメラルドより明るい色調です。19 世紀になるとオリーブグリーンのものをペリドット、明るいイエローグリーンのものをオリバインと呼んでいました。

ペリドットは、その安らかな色から不安を取り去り、夫婦の絆を強くするとされてきました。また、弁舌をさわやかにするとも。ただし、ゴールドと組み合わせないと、そのパワーは半減してしまうそうです。

この石は夜でも光り輝くと言われています。実際、薄明かりの中で緑色がより深くなるため、イブニングエメラルドとも呼ばれています。日本では、どちらかというとカジュアルな使い方がポピュラーですが、アクアマリンと同様、イブニングパーティーにお似合いの石とも言えます。

ペリドットの原石は約 3500 年前にエジプトのアレキサンドリアで発見されました。最初のペリドット鉱山は、紅海にあるセベルゲット島(アラビア語でペリドットの島、現在のセントジョーンズ島)とされています。

トパゾス島(紅海)で多く産出されたことから、この石は、古くはトパーズと呼ばれていました。この島はエジプト王家の所有で、厳重な警備がなされていました。エジプト王家にとって、ペリドットはとても貴重な宝石だったのです。古代エジプト人は、太陽神ラーが太陽の船に乗って現世と来世の空間を往き来するというイメージを持っていました。また、前述のようにこれを太陽の石と呼び、その中に宿る太陽の力で悪を追い払ってくれると信じていました。隕石の中から良質のペリドットが見つかることは、単なる偶然の一致でしょうか。

ハワイ・オアフ島のダイヤモンドヘッドは、太陽の光を反射してキラキラ輝いていたことに由来しています。しかし、そこの岩石に含まれていたのはダイヤモンドではなく、実はペリドットだったため、以来ペリドットはハワイのダイヤモンドとも呼ばれるようになりました。


 ルビー(紅玉)Ruby(7月の誕生石)
 ルビーは数多くの伝説を持つ宝石です。それは、情熱的とも神秘的とも言える血のような色のためでしょう。ルビーの語源であるラテン語のルベウスは、まさに「赤」という意味。ピジョン・ブラッド(鳩の血)と呼ばれている最高級のルビーは、わずかに紫がかった鮮やかな赤色で、そのほとんどがミャンマーで産出されています。意外にも、ルビーの世界産出量はダイアモンドのわずか三十分の一。それだけ価値の高い宝石と言えるでしょう。

キリスト教のことわざにいわく「有能で理知的かつ貞淑な女性 ··· どの男がそれを見つけるのか。彼女は宝石よりはるかに手が届かず、その価値はルビーよりはるかに高い」と。女性を小バカにしているようにも聞こえますが、いずれにせよ、ルビーが価値の尺度に選ばれたのは偶然ではありません。ダイヤモンドより希少でダイアモンドに次いで硬く、またその色が、血・心臓・怒り・愛・勇気・火・王位などに象徴されたルビーは、世界中の歴史の中で、神話とイマジネーションの対象となってきました。

血の色・心臓の色をしたルビーは、パッションとロマンスをもたらしてきました。転じて、愛と友情を引き寄せ、それを不変に保つパワーがあると信じられるようになりました。そのことから、ルビーは婚約指輪にピッタリの宝石と言えます。情熱が永遠にさめませんように・・・・

ルビーの色が変わるとき持ち主に災難がふりかかる、という言い伝えがあります。このことは、次の史実抜きには語ることができません。

英国王ヘンリー8世の最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンは、最上のルビーを持っていましたが、あるときからしだいに色褪せていったというのです。そして、まさに言い伝えのとおり、ヘンリーはキャサリンと離婚し、侍女であったアン・ブーリンと再婚します。しかしアンも、ついには王への裏切りの罪で処刑されてしまうのです。この一連の王室スキャンダルは、1535 年にイギリス国教会がローマンカトリックから離脱するという歴史的事態にまで発展します。英国王の離婚と再婚を正当化するためには、離婚が許されていなかったローマンカトリックの教義は都合が悪かったわけです。その後、英国とバチカンは絶縁状態となり、ローマ法王が英国を公式訪問したのは 2010 年のことでした。

余談ですが、ヘンリー8世にせよ、王位を捨ててアメリカ女性と結婚したエドワード8世、チャールズ皇太子にせよ、結婚にまつわるスキャンダルは、失礼ながらイギリスの伝統のようですね。

古代ギリシャでは、ルビーの中に戦の神マルス(英語のマーズ)が住んでいて、エネルギーに満ちているとされていました。赤い火星をマーズと呼ぶのはこれに由来します。

絹糸状の結晶構造を持つルチルのシルクというルビーは、上半分がドーム状のカボッションカットにより6条の光線が中央で交差し、美しい星のように見えます。これはスターサファイアと同様にスタールビーと呼ばれるきわめて希少なもので、悪を追い払って幸運をもたらし、良き伴侶を見つけてくれるという言い伝えがあります。

ルビーは善いパワーをもたらしてくれる宝石でもありますが、中世以来、指輪にせよブローチやブレスレットにせよ、身体の右側に着けないとその効き目を発揮しないとされています。ヨーロッパの美術館を訪れたときは、時間があれば中世の肖像画を見てみましょう。ルビーを着けていれば、みんな右側のはずです。

ジュエリーとして加工された世界最大のルビーは、14 世紀にボヘミア王チャールズ四世が所有していた 250 カラットのものとされています。